僕の為の生誕祭

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「大悟。」 午前0時、扉の向こう側で母の声がした。 「ケーキ、此処に置いておくわね。」 淡々とした、それでいて寂しげな細い声はそう言うと足音と共に遠退いた。 僕はというと部屋の前に置かれたであろうチョコレートケーキの姿を思えばもうそんな時期かと、無関心にそう思った。 「お…レベル上がった。」 鍵を開けてやる訳でも無く母への返事の代わりにマウスをクリックして、チカチカと光るディスプレイにうつるキャラクターに目を遣る。 ″おめ~″ ″レベルうpおめでと!″ 次々と表示される噴出しと、祝いの言葉。 ″もう一人の僕″と一緒に電子の海を冒険していた彼等は剣や杖をしまうと顔文字に似たエフェクトと一緒に声をかけてくる。
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