花屋敷

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それからだらだらと回り道をして、漸くケーキ屋についた所で僕は絶望した。 相変わらず店先は寂れていて”ジェイソン”とかかれた歪な看板には不細工なうさぎの絵が描かれている。 いっそホラーじゃないかとも思えるその絵も、五年以上ぶりに見ればいっそ懐かしささえ感じた。 いや、それはいい。 僕が絶望したのはそこじゃない。 むしろ店が潰れていなかったことに僕は心底安心した。 けれども問題はここからで、 「…えっ、足りないんすか。」 握り締めた二千円が物凄く寂しくて、僕は唖然とした顔でカウンター越しの店主を見ている。 店主も店主でやる気がないのか、鼻でも穿りだしそうな顔をして僕を見ていた。 「二枚じゃ足りないねぇ。せめてもう一枚はいるよ、兄ちゃん。」 「もう一枚…。」 手元にある札は二枚。 勿論ポケットに裸のまま突っ込んできた為、財布は今頃家の中。 余分な金なんて持っている筈もなくて。 「ま、まけてくれませんよね。」 「何処にケーキ屋で値段交渉するやつがいるんだ。」 …確かに。 ほれ、かえったかえったと あからさまな溜息をつく店主。 その場で固まったまま動くことの出来ない二千円を握った手と、立ち尽くした両足。 何故だろう、もうこの状況が悲しくなってきた。 僕は一体何をしているんだ。 良い年して。 それも誕生日なのに、ケーキ屋とか来ちゃって。金足りないし。買えないし。 …あれ、僕って今日で幾つになったんでしたっけ。
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