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「で、如何するんだい。買うのか、帰るのか。」
腕組みをした店主が欠伸のついでとばかりにそんな問いを僕に投げかけた。
幾ら昔から商店街にある寂れたケーキ屋だからって、この店主の態度は如何なのか。
僕はううんと唸り声をあげ、ガラスケースの中にあるケーキ達を睨んだ。
花も買えない。
ケーキも買えない。
たったひとつのおつかいもできない、良い大人の僕。
今日誕生日の僕。
そしてまたひとつ年をとった…僕。
「…本当、何やってるんだ。」
また振り出しに戻る。
何度戻っても、そこには情けない溜息しかだせない自分。
―けれども、此処で手ぶらのまま帰ればまた朱美にどやされるだろうし。
何より久しぶりに顔を合わせる父に対する機嫌取りの材料が欲しかった。
どうせ小言を言われるのは目に見えてるのだから、少しでもその時間を削るための小細工が必要なのだ。
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