花屋敷

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その猫と遭遇したのは丁度木の間から飛び出してきたところだった。 その場で足を止めた僕をじいと見上げて、お互いがその場で固まっている。 「おまえ、さっきの。」 お互いが見詰め合う形でいると、猫はその体勢のまま返事をするようににゃあと一言だけ鳴いた。 飛び出してきたのは先程見かけた緑の塀の延長線らしく、僕が今居るのはその塀の中に入る入り口の真ん前。 要は、やたらと大きな家の正門前らしい。 そして、 「ラック!何処にいるのー?」 その庭先で声をあげる如何にも此処のお嬢様らしい女の子の姿。 「…これって、おまえのことだよな?」 首輪をしているから野良じゃないだろうとは思っていたけれど、まさかセレブ猫だったとは。 人間も猫も見かけによらないものだなんて変な関心をしながら、僕は”ラック”の前に座り込んだ。 その頭を一撫でするとごろごろと喉を鳴らす。 どうやら気紛れだけれど、人懐こい性格のようだ。 「届けたら一割貰えるかな…。」 まあ、その一割が何に当てはまるかはわからいのだけれど。 当たり前だが、猫の肉破片を寄越せだのと、道徳の無い事を言うつもりは毛頭無い。
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