21人が本棚に入れています
本棚に追加
「ラック…何処に行っちゃったのかな―」
女の子が居るのは、薔薇の咲き誇る立派な庭だった。
花なんて全く興味の無い僕でも、素直に”綺麗”だと思える程に手入れが行き届いている。
だけど、それよりも。
彼女の風に靡く長い黒髪に、僕は目を奪われた。
飼い猫を探してゆらゆらと揺れる大きな瞳はほんの少し伏せられている。
青いワンピースの上に白いブラウスを羽織っていて、時折困った様に細い手を口許に伸ばしていた。
普段二次元の女の子としか触れ合っていない僕が言うと胡散臭く感じるかもしれないが 凄く綺麗な人だった。
特別美人といった顔立ちではないが、その華奢な身体と身に纏う雰囲気がそう感じさせるのだろう。
兎に角その一瞬、僕は間違いなく彼女に見惚れていた。
「事故にでもあってなければいいんだけど…。」
彼女の伏せられた瞳は物悲しげで、長い扇形の睫毛が濃い影を作っている。
ケーキ屋に向かう途中聞いた声も同一だろうし、余程可愛がっていた猫だったのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!