花屋敷

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と、いうか。 こんな冷静に、知らない女性の家の前で、覗き見よろしくといわんばかりに見惚れてる場合じゃないんじゃないだろうか。 端から見たら如何見ても怪しい。通報されても可笑しくない。 ―かといって、困っているのを見過ごすわけにもいかない。 恐らく彼女の探し物であろうものは今、僕の目の前にあるのだから。 …なんていうのは建前であって、本当は彼女とお近づきになる理由が欲しいだけなのかもしれないけれど。 ごくりと生唾を飲んで拳を握る。 とりあえず勇気を振り絞ってみたはいいけど、膝は情けない位に震えていた。 何でこんな格好して来ちゃったんだろう。 もっとお洒落するとか。 髪型きめてくるとか。 大体、最後に女の子と喋ったのなんて何時だったっけか。 不安要素なんて幾らでもある―どころか。 下心しかない僕の、超格好悪い今の状況。 ―結局僕は、ラックを抱えてから深呼吸に十分程度要して漸く立ち上がる事に成功した。
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