僕の為の生誕祭

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ネットゲームの中を旅する僕のレベルは98。 もうすぐで、カンスト。 現実世界で一人ぼっちで無職な僕でも、ゲーム内ではみんなが僕を必要としてくれる。 そこは僕にとっての、居場所だった。 ″レベルアップおめでと、リアルBIG!″ 中でも、仲間のうちの一人のキャラクターが笑顔のエフェクトと一緒にそんな噴出しをくれた。 不意に口許に笑みがこぼれる。 ディスプレイに表示されたその噴出しは、扉越しの母の声なんかよりも随分心にあたたかさをくれた。 ―勿論、BIGというのは本名じゃない。 所謂ネット上のハンドルネームって奴で、僕には篠崎大悟っていう立派な名前がある。 ―今となってはどちらが本当の名前かなんて忘れてしまったけれど。 ″ありがとう、milk″ 僕は、映し出された文字の相手に応える様、慣れた手つきでキーボードの上に指を滑らせた。 彼女の名前は″milk″。 これもまたハンドルネームで、半年前にネットゲームの中で知り合った同い年の女の子だ。 …とはいえ、勿論実際に会った事なんてないから実際の年や、年齢も本当かどうかはわからないのだけれど。 あくまでこれは彼女の″自称″だ。
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