僕の為の生誕祭

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「―うーわ、相変わらずきったない部屋ねぇ。絶対換気とかしてないでしょ、この部屋。」 「んあ…。」 甲高い女の声と共にザッとカーテンが開く音が耳に届き、反射的に薄目が開かれた。 ちりちりと瞼に刺さる日差しにただでさえ細くしか開いていない目を更に細め、頭まで布団を被る。 差し込める朝日を背に、ふわふわと細い埃が舞っている中に見える白いスーツに身を包んだ女の後姿。 埃を羽にでも差し替えれば天使にでも見えたのかもしれないがどうみてもそれは見知った顔で、神秘性や神々しさの欠片も無い人物だ。 「ほら、この布団も。絶対干してないでしょ!」 そいつは窓を全快に開いた後、今度は躊躇無く僕の布団を剥ぎ取った。 現時刻―…枕元の時計を確認したところ 十時二十四分。 急に失った僕の体を包む暖かさ、そして安眠を妨げられた事に僕は不愉快な声をあげた。 「朱美…。」 「人を彼女か何かみたいに呼ぶなって何度言えば…。お姉ちゃん、でしょ。」 朱美は取りあげた布団を手早く窓の外に干し、腰に手をあてたまま唸る僕を睨む。 枕に突っ伏したままはいはい、と二つ返事を返すと彼女はまた大きな溜息をついた。 「相変わらず無愛想な奴ね。…今何時だと思ってるの?」 「それは僕が言いたい。」 携帯のアラームをかけたのは十六時の筈だ。 けして、十時二十四分じゃない。
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