イッパイの謎

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 どこかの居酒屋。  中年ぐらいの男が席に着き、注文する。 「酒をイッパイください」 「あいよ」  店主は威勢のいい返事をする。男の席に、酒をイッパイ置いた。  男は、それを黙って眺めていた。その表情は不満そう。なにか気に入らない。そんな感じだった。  気づいた店主がおずおずと尋ねる。 「あのー、注文を間違えましたか?」 「いやそのー、私は酒をイッパイと頼んだのですが……」 「ええ。だから、イッパイ出したじゃないですか」 「……これがイッパイですか?」  男は信じられないといった様子で、目の前のイッパイの酒を指さした。
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