122人が本棚に入れています
本棚に追加
「何だよ二人とも、俺がいる場所知ってたのか?」
彼女にキスされた頬を拭いながら、二人に質問を投げ掛けるレッドの表情はどこか嬉しそうだ。
「君の居そうな場所なんて、すぐにわかるよ。僕を誰だと思っているんだい?」
男は上目遣いに、ズレてもいない眼鏡を指で軽く持ち上げる仕草を見せた。
「あんた、単純だもん。家族が欲しいとか、子供たちがかわいいとかさ。そんな理由できっと、ここにいると思ったわ」
女は髪をかきあげ、サラサラと靡かせながらレッドを見下すように話した。
「んだよ!俺だって頭使って!」
「だまれ「だまりなさい」
二人の声が重なった。
「それより、爺さんはどこにいるんだ?三人が集まったのに一向に姿を見せないな」
二人を無視して、レッドが喋り続けた。
二人は呆れた表情を見せると、レッドの背後を指差した。
「そこ「そこよ」
また二人の声が重なる。
息ピッタリだ。
レッドは、言われた通りに自分の背後に目を向けた。
「なんじゃ、おもしろくない。もう見つかってしまったか」
高笑いを上げた小さな老人が、レッドの顔を見上げていた。
「何だよ爺さん!居るなら居るって言えよ!」
レッドが軽口を叩くと老人は、その表情を真剣な物に変えた。
老人の頭には黒のシルクハット。手には、金であしらえた、懐中時計。カチカチと開いたり閉じたりを繰り返している。
身を包む黒のマントは、老人を紳士だと見受けさせる。
「レッド、お前は落ち着きが足りんのじゃ。だから、二人に居場所をすぐに嗅ぎ付けられる」
最初のコメントを投稿しよう!