スラム

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彼は男の子と、夕焼けの中で楽しく遊んでいた。 しかし、それは本当の‘幸せ’ではない。 幸せっていうやつは、家族と共に居る者にこそ相応しい言葉だ。 家族を持たない人間は、大人になっても心の中にポッカリと大きな穴を存在させ続ける。 たとえ自らが幸せだと感じていたとしても、捨てられたという事実や、親が死んでしまったという現実から逃れる事はない。 「あっ!もうこんな時間だよっ?集会にいこうよっ!」 男の子は、元気よくレッドに‘集会’へ行く事を促した。 「もうそんな時間か。確かに……もう暗いな」 レッドは、男の子を軽々と自分の肩から下ろすと集会の行われるスラムの中心地へと足を進めた。 「今日は、何か良いものが届いてるかな?」 希望を膨らませた男の子の目に、レッドは胸を痛めた。 今の世界に良いものがあるとすれば、それはお宝だろう。 しかし、お宝の多くは金持ちや悪人の手に渡っているのがほとんどだ。 遺跡や秘境などのお宝を根こそぎ集め、自らのステータスとして所有する。 金持ちってやつは、優しさってものを持っていないのだろうか? 偽善者。 そう、彼らは偽善者だ。 仕事のない者を安い賃金で雇い、危険な仕事をさせる。 それで親を亡くした子供たちも少なくない。 そういった子供たちに、政治家たちが立てた政策が‘集会’ 食べ物や衣服を僅かだが無料で分け与える。 しかし、政治家たちは国から巻き上げた税金などを使うでも無く、国民がボランティアで行えという政策を掲げているのだ。 なんともおかしな話ではないだろうか?
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