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レッドは、スラムの中心地に集まる人々を眺めて思いを廻らせていた。
確かに、ボランティアでも来てくれる人々はいる。
温かい料理、温かい衣服。しかし、子供たちの心は満たされる事はない。
親のいない子供とは、そういうものだ。
眠れない夜を枕を濡らして堪える子供たちに、罪なんてない。
そんな子供たちを守りたいが為に体を鍛え、仕事を熟してはいるが、今の時代、一人だけで大勢を助けられるわけもない。
爺さんは本当に凄い奴だったのだと、納得させられる。
それに対し、スラムの大人たちの心は荒んでいる。目に光などあるはずもなく、希望を失った彼らは屍も同じだ。
「レッド!おーい?」
考えを廻らせていたレッドは、男の子の呼びかけに気づかなかったようだ。
慌てて男の子に笑みを送り、男の子の視線と同じ位置に視線を合わせるようにしゃがんだ。
「わりぃわりぃ、ちょっと考え事」
「なんだよぉ、ボランティアの人たち帰っちゃうだろ?早く行こうぜ!」
男の子は、レッドの手を引き短い足で必至に歩いている。その姿が、可愛くて考え事なんて忘れてしまったレッドは、立ち並ぶ長蛇の列の最後尾に並んだ。
今日のご飯は、どうやらシチューらしい。この肌寒い季節には、体が温まるシチューは最高の贅沢だ。
金持ちの奴らは今頃、暖炉の前で気持ち良さそうに、うたた寝でもしているだろう。
しかしこのシチューが、スラムの人たちにとっては最高の贅沢なのだ。
「おいしい、温まる」
口々にスラムの住民たちの表情が綻んでいく。
ボランティアの人たちの僅かながらの優しさと温もりが、心の冷たさを温めてくれる。
優しさとは、良いものだ。しかし‘集会’も毎日あるわけではない。
甘えすぎてはいけないのだ。自らの力でスラムから脱出する。
良い働き口を見つける事がスラムの住民の何よりの願いだ。
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