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スラムは、人々の痛み、寂しさ、憎しみ。いろいろな負の感情が入り混じった場所だ。
一歩外に出れば、希望に満ち溢れた者たちが闊歩している。
レッドは、差別という言葉が嫌いでならなかった。
しかし、親がいる子供といない子供では、やはり差別が生まれる。
このジパングでは差別を嫌うが、気づかないうちに自分たちも差別をしているという人間がたくさんいる。
「おっ!やっと食えるな」
「うん!レッド!早く貰ってくれよ」
男の子の背丈では、まだボランティアの人たちの配るシチューを受け取れる高さではないようで、背伸びをしながらシチューの匂いに目をつむり、至福の表情を浮かべた。
「あの……」
ボランティアの女性に、頬を赤らめながらモジモジしているレッド。
見た目が、男らしいだけにその恥じらう姿が何とも言えないギャップを感じさせる。
「おねぇさん!シチューください」
男の子が笑顔で言うと
「ちょっと待ってね?」
微笑み、シチューを手渡してくれた。
「ありがとうおねぇさん!綺麗な人にシチューを貰えるなんて幸せだよぉ」
男の子が屈託のない笑顔で女性にお礼を言った。
女性は、お世辞が上手ね。と、笑うとレッドにもシチューを手渡した。
「あ……ありがとう」
恥ずかしそうに俯きながら礼を口にしたレッドに、女性は微笑みシチューの入っていた容器を片付けていく。
どうやら、レッドでシチューは完食されたようだ。
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