秀長動く

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真っ赤な鎧姿の武将は陰から左近と全登が引き上げるのを確認した後、中央にある一際大きな幕舎に入った。中には6人の男達が座っていた 『おおっ。幸村。ご苦労であった。どうじゃった。大人しく引き上げたかな。』 上座に座る武将が笑顔で話した。 『はい。秀長様。』 上座に座る男は豊臣秀長。死んだと見せかけ姿を消した秀長は9年の歳月ただひたすら豊臣の事を思い、また自分が表に立つことのないように願いながらずっと耐えてきた。 しかしその願いも虚しく、兄秀吉が亡くなるのを待っていた家康は牙を向いた。秀長は当初は見守る姿勢を見せていたが、佐吉達の劣勢に表舞台に出る決意をして今ここにいた。 真っ赤な鎧姿の男は真田源次郎幸村。真田昌幸の次男。 秀長の策により同じく死んだとされている軍師大谷吉継の推挙で幕下に呼んだ。当初はまだ若く未熟な武将であったが、吉継の厳しい指導もあり、今では秀長の信頼も篤く、立派な部隊長に成長していた。 元は信繁と名乗っていたが、此度の出陣に伴い、名を幸村と改めていた。
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