序章

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吉継は居室にて腹心の湯浅五助と語らっていた 『殿。おくつろぎのところ申し訳ありません。先程より門前に殿の知己と申す僧が面会を申し込んで参りました。いかが計らいましょう。』 『わしの知己とな。その僧の名は何と言うのだ。』 『豊竹庵と申しておりますが。』 『はて・・・。そのような名の僧は知らぬが・・・。』 『さっ・・・さようでございましたか。その御坊、殿をご幼名で呼んでおったものですから、念のためにお伺いをたてたのですが、早速追い払うと致します。』 『待て。わしを幼名で呼んだとな。うむ。面白い。会うてみよう。』 側で黙って門番との会話を聞いていた五助は、渋面を浮かべて吉継を諫めようとした。 『殿っ。そのような得体の知れぬ者と会うなど申されては困ります。』 『良いではないか。退屈しのぎじゃ。構わん。広間に案内せよ。』 門番に命じると門番は大きく返事をすると足早に去った 『殿。お戯れが過ぎますぞ。何かあってからでは遅いのですぞ。』 『わかったわかった。ならばそちも着いてこい。』 『当たり前です。』 吉継は笑いながら、座を立ち広間に向かった。 それを見て五助は慌てて後に付き従った。 門前で待っていた秀長は屋敷の中から門番が出てくるのを見つめていた 『御坊よ。殿がお会い下さるそうじゃ。案内いたすゆえ着いてまいれ。』 秀長は門番の後に付き従った。
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