序章

20/22
前へ
/196ページ
次へ
『なるほど。そのような子細があったとは・・・。』 『紀之介、わしはもう大納言でもなければ、豊臣小一郎秀長でもない。豊竹庵じゃ。本心を申せば、何事もなく豊竹庵として生涯を終えても良い。むしろそれを願うておる。じゃが何かあってからでは遅いのじゃ。起きるか判らぬ事の為にそちを巻き込むのは忍びないが・・・。そちしか頼める者がおらぬ。わしに力を貸してはくれぬか。この通りじゃ』 『だっ・・・大納言様。いや・・・。豊竹庵様。お顔をお上げください。私は豊臣の臣にございます。豊臣の為になるならば、この非才の身お預けする事に躊躇いはございませぬ』 『では。紀之介。わしに力を貸してくれるのだな。』 『しかし、私に豊竹庵様と同じ事ができましょうか・・・。』 『わからぬ。じゃがわしに出来た事じゃ。そちにも出来よう。わしはそう信じておる』 『わかりました。私もそう信じる事に致します。』 二人は笑顔で頷きあった。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

822人が本棚に入れています
本棚に追加