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気まずい雰囲気の中に左近が入ってきた。
『おお。左近殿。待っておりましたぞ。新手の詳細はわかりましたか。』
秀家は左近が表れた事にほっとしたように話しかけた。
『はぁ・・・。それがわかりませぬ。』
左近は秀家の問いに申し訳なさそうに答えた。
『島殿。そいはどげんこつでごわすか。』
『それが約二万の軍勢なのですが・・・。旗指物等も一切無く、全ての兵が面当てを着けておる為顔もわからぬとの事でございます。』
左近の報告に一同不思議な顔を浮かべ困惑していた。
『左近。その軍勢は今どうしておる。』
『中山道を出て関ケ原よりに陣を敷いております。』
三成は秀家に話しかけた。
『うむ。いかが致しましょう。秀家様。』
『どうしたものか。どこの手の者かわからねば、うかつに動けません。』
秀家も困惑し、打つ手を考えていた。
『宇喜多様。実は徳川方の陣に放っている忍びからの報告ですが、あちらも主だった将が本陣に参集しているとの事でございます。』
『それは真ですが。ならば少なくとも敵ではないのですね。』
『わかりませぬが・・・。いかがでしょう。こちらから接触してみては。お命じ下されば某が使者にたちますが。』
『うむ・・・。それも手ですが・・・。皆様方いかがでしょう。』
秀家は一同を見回した。
皆一瞬考えこんだが、一様に頷いた。
『では左近殿お願いいたす。くれぐれも用心してくだされよ。念の為わが臣全登を連れていって下され。我らはここで帰るのを待つ事にいたします。』
『全登殿をつけてくだされるとは、心強き事にございます。では早速行って参ります。』
左近は笑顔で応え、一礼すると本陣をあとにした。
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