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家康は全員が揃った事を確認すると、傍らに控える正純に合図を送った。
『皆様このような夜更けに参集していただいたのには訳がございます。実は中山道今井宿方面より約2万の軍勢が表れ、中山道を出て関ケ原よりに陣を敷きましてございます。この軍勢には一切の旗指物無く、全員が面当てをしているとの事でございます。』
正純の言葉に場はざわめきった。
家康は手で制した
『わしには全く心当たりがなくてのう。些か困惑しておるのじゃ。そこで誰か知らぬかと思い、夜更けとは言え参集していただいたのじゃ。』
『内府殿が知らぬのならば、方角からして石田方への大阪からの増援と考えて宜しいのでは。』
長政が言うと正則は頷いた
『おお。そうじゃ。あの狐めが我らに恐れをなして呼んだのであろう。そうに決まっておるわ。』
ほとんどの武将が頷くなか、1人の武将が異を唱えた
『黒田殿と福島殿の言う事もっともなれど、どこの手の者がわからぬのが気にかかりますなぁ・・・』
この武将伊予板島8万石の大名で藤堂高虎と言う。元は浅井長政の家臣で浅井が滅びると主君を転々と変えていた。秀長に仕えていた事もあったが、秀吉が亡くなると急に家康に近づいた
高虎の言葉に正則は顔を真っ赤に怒鳴った
『どこの手の者だろうが、このわしが今すぐ討ち取ってくれるわっ。』
正則の言葉に大名達も黙っていれば、家康の心証を悪くすると思いたち、我先にと申し立てだした。
その大名達を冷ややかな視線で見つめる徳川譜代衆と長政、高虎、輝政の三名の大名がいた。
三名は無闇に兵を損なうのを嫌っただけではなく、ここで名乗りを挙げずとも家康に無下に扱われ自信があったのだった。
『大殿。笹尾山の石田本陣にも主だった大名が駆けつけ騒然としている模様にござります。軽々に判断するのも如何かと思いまするが。』
正純は騒ぐ大名を制し、家康に話しかけた。
『うむ・・・。ここは石田方の動きを見てみるのも手かのう。どのみち攻めるには夜明けを待つしかないしのう。各々方のお気持ちはこの家康しかと受け止めましたぞ。今宵は一旦陣に戻っていただきたい。但し何が起こるか判らぬゆえ、怠りないよう務めてくだされ。』
そう言うと解散を命じた。
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