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四半刻(30分)が過ぎた頃、先程の見張り番を伴い、全身真っ赤な鎧を身につけた武将が二人の前に表れ、一礼すると話しだした。
『大変申し訳なき事ながら、御大将はお会いなさらぬとの事でござる。お引き取り下さい。』
『そこを何とかお取り次ぎ願えませんでしょうか。』
『ご承知の事かと存じますが、我らまだこの場に宿営したばかりにございます。お恥ずかしき事ながら、陣内まだ落ち着いておらず何のお構いもできませぬ。明日こちらよりご挨拶に参りますゆえに、ここはお引き取り願いたい。』
武将の言葉に暫し考え、ここで相手の心証をわるくしても不味いと思い一旦引き上げる事にした。
『左様にござるか。判り申した。そのような時に参った我らにも非は御座います。どうかご容赦ください。せめてどこのご家中の方々かだけでもお教え願えませぬか。』
『申し訳ござらぬが、某にはお答えできませぬ。では御免。』
武将は一礼すると陣中に戻っていった。
『島殿。良いのでございますか。』
『仕方がありません。夜明けを待つしかないでしょう。引き上げましょう。』
『島殿が申されるならば従いましょう。しかし島津殿が何と申すか・・・。』
『何とかなるでしょう。』
二人は馬に乗り引き上げた。
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