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ほっぺたを手で引っ張ったり摘んだり挟んだりと、涙目になりながら手を叩いて必死に止めてと訴える由香を無視する和樹は、半ば遊んでいる。
「ぐっ…があっ…」
うなり声をあげながら、地に付していた男が身を起こす。
「!とうほうくん!あっひあっひ!!」
「誰がとうほうだ」
「はなひてよ~!!」
未だに由香の頬から手を離そうとしない和樹。
完全に遊んでしまっている。
「が…ガキがぁ……」
フラフラと立ち上がる男、江上。
それに合わせるかのように、和樹は由香の頬から手を離した。
頬をさすりながらもう泣いている由香から立ち上がって離れ、江上と向き合う。
「やってくれたなぁ…テメェは絶対喰ってやる!全部!肉片一つ残さねえように喰ってやるぞ!!」
怒りとともに吐き捨てる江上は、ワナワナと体を震わせている。
その姿を黙って見据える和樹は、さっきまで少女の頬で遊んでいた男とは思えない目つきをしている。
冷たい、辺りを凍り付かせるような目を。
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