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「………」
黙ったまま、和樹は動こうとしない。
そのいかにも余裕な様子を見せる和樹に、歯を食いしばってさらに怒りを露わにする江上。
「そこの女もろとも!喰ってやるぞぉ!!」
叫びながら、和樹に向かって飛びかかる。
大きな巨体が飛んでくるなか、和樹は地面に座り込んでいる由香を抱え上げ、ギリギリでかわす。
そのまま江上は木にぶつかるが、ぶつかった箇所を喰いちぎり、木はメキメキと音を立てて倒れた。
ギロリと目を向け、由香を抱えながら片膝をつく和樹を目で捉える。
「……白木」
抱えた由香をゆっくりと下ろし、名前を呼ぶ。
「な、何?」
「…少し、後ろに下がってろ」
由香を立たせ、一歩前に出る和樹。
「………まあ、一瞬で終わるから、その必要はないがな…」
そう呟き、さらに一歩踏み出す。
そして、スッと、左目を閉じた。
「……なんの真似だ…それは…」
和樹の行動に、完全に頭にきた江上は、もう爆発寸前だ。
「ぶっ殺してやる!!!」
殺意剥き出しな大声を飛ばし、江上は和樹に向かって突っ込んでいく。
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