275人が本棚に入れています
本棚に追加
―――が、
江上の動きが、ピタリと止まった。
くの字に体を折り曲げながら――。
そして、力無く地面に崩れた。
「…………」
一瞬すぎる出来事に、何が起きたのか理解できない由香は、ポカンと口を開けてその場を見つめる。
しばらくその場を黙って見ていると、
「…ガハッ…ゲボッ」
口から血を吐き出しながら、ガクガクと震える腕で支えながら体を起こし始めた。
「……無理するな。死ぬぞ」
その姿を冷たい目で捉える和樹は、感情のない、ただの言葉を吐く。
その言葉に何も答えず、震える体を起こし、立ち上がった江上は、口から血を流しながら和樹を睨みつける。
そんな睨みにも動じずに見つめ返す和樹。
「…て、テメェも……異能者だった…のか…」
小さい、呟くような言葉を漏らす江上に、
「………さあな」
冷たく返す和樹。
和樹の目は、まだ右目だけが開いている。
「……その……"右目"か…」
江上の言葉に、由香はハッとして気付いた。
この街に来た理由は、江上に復讐するため。
しかし、もう一つ、小さな嘘臭い情報を聞いてやってきた。
――ゴッド・アイを持つ異能力者がいる――
「…東堂くんが…『神の目』【ゴッド・アイ】の持ち主だったんだ…」
最初のコメントを投稿しよう!