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由香の呟きにも関することなく、和樹は、ゆっくりと口を開く。
「今ここで、罪を償って自首するのなら、俺は何もしない。だが、これ以上俺の"平穏"を壊そうとするのなら……」
そう言葉を口にした瞬間、江上のすぐ側の地面が爆音とともに吹き飛んだ。
「ただではすまさん」
隣に出来た、大きく、そして深く窪んだ地面を見つめ、江上は冷や汗を流す。
冷たく言った和樹は踵を返し、由香に歩み寄っていく。
「…と、東堂くん。この男を見逃すの…?」
「俺はこいつを殺しに来たんじゃない。俺の平穏を守りにきただけ…そして、ついでにお前を助けにきただけだ。
こいつを殺したいのなら、俺の知らない遥か遠くでやれ。俺の近くでそんな事が起きれば、平穏もクソもない」
そう言って由香のすぐ側を通り過ぎ、立ち去ろうとしたその時、
「クソッタレがぁ……」
和樹の耳に、そんな言葉が届いた。
立ち止まって後ろに振り向いて見ると、さっきまで地に這い蹲っていた江上が、おぼつかない足取りで由香に近付いていく。
そして、
「…っうぐ!!」
「…!?」
江上はまだ地面に座り込んでいた由香の首を突然後ろから絞めあげ、和樹の方に向いて後退りした。
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