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燃え盛りながら飛んでいく豪炎が、突然かき消された。
そして、消された炎の向こう側にいるはずの少年の姿が、そこにはなかった。
その二つの事に呆気にとられた江上に、隙が生まれた。
何故炎は消えたのか、何故炎の向こう側に和樹の姿がなかったのか。
それは、ほんの一瞬前の出来事から生まれた隙だった。
由香の放った特大の炎によって生じた熱と光に一瞬目が眩み、さらにはその巨大な炎に和樹の全身が隠された事によって、江上の目から和樹の姿が見えなくなった。
そしてすぐに、目の前の炎が突然吹き飛び、かき消されたという事に怯み、加えているはずの和樹の姿がなければ、困惑せざるを得ない。
この困惑が、隙に変わったのだ。
由香の炎が自分をスッポリ飲み込んでしまうほど大きな物だと知っていた和樹は、その間に右側に素早く駆け出す。
ギリギリかわせたぐらいで左目を閉じ、右目の異能の力を放って炎を吹き飛ばす。
と同時に全力で右に大きく飛び込み、江上の視界から消える。
炎の光に目が眩んでいた江上には、その一瞬で動いた和樹の動きなど、捉えれるはずがないのだ。
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