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地面に屈んだ形で踏ん張って勢いを殺して止まった和樹は、すぐさま右目に力を込める。
「…!!」
その姿を視界の端で捉えた江上は、和樹の方に首を向けた。
正面からでは江上に届かない。盾にされている由香に当たってしまったらまずい。
なら、江上の顔が見える"角度"にいけばいい。
見える角度に移動できれば……
「…くらえっ…!」
右目から放たれた見えない力が、江上の顔面に直撃し、江上は由香を離して後ろによろめいた。
「白木!離れろ!」
「…!!」
和樹の指示に従い、すぐさま江上から離れた。
「ぐがっ…グッソォ……………ッ!!」
よろめいた姿勢を整えて踏ん張り、驚きの色がまだ残る状態で和樹の方に向く。
そして、息を飲んで固まった。
江上の真ん前に、右目をギラギラと光らせて自分を見据える少年に、体を強ばらせた。
生まれて初めての、他者から受ける恐怖。
与える立場だった自分が、今は与えられている。
そんな江上の怯えた表情を、激しい光を灯した右目の視線が撃ち抜く。
そして、
「……さようなら」
和樹の口から、小さく、そして冷たく、ポツリと言葉がこぼれた。
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