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淳の両手に手甲が出現し、それから鋭い爪が伸びた。
「ふっ……実力で俺を捕らえるのか?」
「それが不可能なら殺す。てめぇの存在は世のため人のためにならねぇからな」
「ほぅ……」
神崎は唇の両端をつり上げる。
「相当、自分の力に自信があるようだが――できるか?」
「やってやるさ。くそ野郎!」
淳は吠えると足に力をいれて床を蹴る。
一瞬で神崎との間合いを詰めて、右手を振り抜く。
鋭い五本の閃光は走り抜け、何もせずに佇む神崎の体を貫いた。
予告なしの、不意をついた一撃――
しかし。
神崎の体が揺れたかと思ったら――淳の目の前で掻き消えた。
「――はやい!?」
「何も驚くことはないだろう」
聞こえてきた声は淳の後ろから。
淳は後ろを確認するよりはやく跳んで距離を取った。
――ぞわっ!
「おいおい」
嫌な感覚が走り抜けた淳は振り返って呆然としたように呟いた。
さきほど淳がいた場所あたりに空間が歪んだような黒い球体が出現していた。
もし一瞬でも動くのが遅ければ……
考えただけでぞっ、とする。
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