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「んしょ、んしょ」
顔と手は泥で黒くなり、水色の制服は汚れていた。
彼女が動くとツインにした髪が生きているように揺れる。
大きな目はキラキラと輝いていた。
愛する人との完璧な愛の巣(?) を想像して。
「待っててね、あーくん。もうすぐ完成だよー♪」
芸術にしてはほど遠いが、一生懸命つくっていたのがうかがえた。
砂場にしゃがみこみ、作業をして三十分くらい経過したかもしれない。
幼女――七倉 桃【ななくら・もも】は完成したお城(?)を見下ろし、手で顔を拭った。
汚れていた顔がさらに黒くなる。
だが、桃は気にしなかった。
「上出来だよ。あーくん、喜ぶだろうな~」
幼くてもても恋する乙女といったところか。
桃は赤くなった頬を手で挟み、腰をくねらせた。
遠目に見るとそれは怪しい踊りである。
桃のツインの髪がぴょんぴょんと跳ねていた。
「よし。あーくんを呼ぶぞー!」
桃はそう言って大好きな人を探すべく駆け出した。
……このあとに悲劇が訪れることも知らずに。
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