日常【一】

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「んしょ、んしょ」 顔と手は泥で黒くなり、水色の制服は汚れていた。 彼女が動くとツインにした髪が生きているように揺れる。 大きな目はキラキラと輝いていた。 愛する人との完璧な愛の巣(?) を想像して。 「待っててね、あーくん。もうすぐ完成だよー♪」 芸術にしてはほど遠いが、一生懸命つくっていたのがうかがえた。 砂場にしゃがみこみ、作業をして三十分くらい経過したかもしれない。 幼女――七倉 桃【ななくら・もも】は完成したお城(?)を見下ろし、手で顔を拭った。 汚れていた顔がさらに黒くなる。 だが、桃は気にしなかった。 「上出来だよ。あーくん、喜ぶだろうな~」 幼くてもても恋する乙女といったところか。 桃は赤くなった頬を手で挟み、腰をくねらせた。 遠目に見るとそれは怪しい踊りである。 桃のツインの髪がぴょんぴょんと跳ねていた。 「よし。あーくんを呼ぶぞー!」 桃はそう言って大好きな人を探すべく駆け出した。 ……このあとに悲劇が訪れることも知らずに。
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