日常【一】

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☆ 少しだけ湿った風が吹き抜け、さやさやと木々の枝葉を揺らしている。 園児たちの元気な声が近くで、あるいは遠くで聞こえる中。 二人の幼女は対峙するように立っていた。 お互い睨みあっている。 一人目はサムライの雰囲気纏う少女だった。 長い黒髪に、切れ長の目。 紫の着物の上に軽く白衣を羽織り、手には白光りする剣――に見立てたハリセンを手にしていた。 二人目はくのいちスタイルの幼女である。 ピンクのくのいち装束、目だけが冷たく輝いていた。 背中に黒光りする刀(型紙でつくったもの)があり、手に手裏剣(もちろん型紙でつくったもの)を持っている。 ――【ひだまり幼稚園】の中庭。 二人のまわりに時代劇の映画みたいな背景が出現していた。 どこかの城の門の前。それが設定らしい。 そんな光景が見えるほど緊張した雰囲気が二人を包み込んでいる。
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