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そして神崎は静かに見据えた。
いつの間に現れたのか、ニット帽をかぶった少女を。
年齢は十代半ばか。
小柄で細い体、どこかの学校の制服らしい服の上からマントを羽織っている。
少女はナイフを一本手にし、口を開く。
「……逃がさない……」
「小娘。お前は【千本羽根】」
「……違う……代理が抜けている」
目を鋭くさせた少女はナイフを投げ放った。
☆
放たれたナイフを指と指の間に挟んで止めたその人物は大きく表情を歪めた。
「なっ……おい、お前。攻撃する相手、間違ってないか!?」
淳は少女に向けて怒鳴る。
「間違ってない。ボクがムカついている相手……それはあなた」
「はあ!? どうしてだ!?」
「今、何時だと思っている?
ボクはか弱い女の子……こんな時間に呼び出すな」
「いや、か弱いオンナは数本のナイフを浮かべないぞ」
思わずツッコミをいれる淳。
少女の名前は鳥神 絢香【とりがみ・あやか】。
彼女はこう見えてもトップエージェントの一人で、【千本羽根】という二つ名をもっていた。
いや、正確にはまだ名乗ってはない。
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