ルララ ルラ ルララルラ…

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それを何回くらい繰り返した頃だったろうか。俺がもしアリスだったら、流す涙で今頃部屋中大洪水に違いない。現に、鼻をかんだティッシュはそこらへんに散らばって大河を形成し、ミネラルウォーターのペットボトルから漏れ出した水が床を汚している。怒りに任せて壁に投げつけたのだ。 「あぁ……くそっ……」 意味のない悪態が唇から漏れた。 その時、またしてもノックの音が部屋に飛び込んで、ミネラルウォーターの水たまりで跳ねた。力任せに三回。さっきの奴に違いない。 「……くそっ」 相手のある悪態が口をついた。 あの野郎、まだ居やがったのか。 「ラフ・メイカーだ、開けてくれ」 辛抱強く、奴は言ってきた。 「消えてくれって言ったろ!いいから帰れ!」 怒鳴った途端、ショックを受けた気配がドア越しに伝わってきた。 「そんな事言われたの、生まれてこの方初めてだよ……」 ラフ・メイカーは呆然としたように呟いた。声にはさっきの元気がまるでない。 どーゆー育ちをして来たんだよ。普通小中学校で一回くらいいじめられて色々言われるモンじゃないのか? 「非常に悲しくなって来ましたよ僕は……うん……もうね……泣きそう……」 はぁ?メンタル弱すぎだろラフ・メイカー。 しかし強ち泣き落としの嘘泣きでもないらしい。しくしくと、妙にリアルな泣き声がひっそりと聞こえて来た。 何がしたいんだこの(ラフ・メイカー)は?笑顔を持ってきたとか適当な事言いやがって、その本人が泣いてたらどうしようもないだろうが! くそ、もうどうしろって言うんだよ!泣きたいのは俺の方なのに、なんでこんな迷惑なもの呼び寄せちゃったんだ? 「何なんだよ!ラフ・メイカーとか名乗った癖に泣くとか言いやがって!冗談じゃねーぞ、おい!ホント、お前なんか呼んだ覚えはねーんだよ!」 怒りに任せてドアの向こうにがなったら、それを聞いた奴はついにわっと声を上げて泣き出した。 え、何コレ俺が泣かせた事になるの?うそ……。 「くそっ、何で俺ばっかりがこんな目に遭わなきゃいけねーんだよ!」 叫んだ拍子にまた涙が出てきた。世間の不条理さに俺が憤ってるのにも構わず、ラフ・メイカーとやらはわんわん泣いている。 ……もう、知らねーよ! 俺はドアに背をもたせかけ、張り合う必要もないのに思い切り泣く事にした。 近所迷惑極まりない男二人の泣き声が、遠く夜空に響いた。
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