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どのくらいそうしていただろうか。
もう二人ともすっかり泣き疲れて、あれほど止め処なく流れていた涙も途切れ途切れになってきた。
向こうもこのドアを背もたれにしているのだろうか。同じように、膝を抱えているのだろうか。
心の堰が流れ落ちたの一緒に、心の扉みたいなモンも開き気味になったらしい。
しゃっくり混じりで涙声というかなり聞こえづらい声で、俺はぼそぼそと語り始めた。
「俺さ……ずっと好きな子がいたんだ……」
入学式、初めて見た時の事。
被った一般教養の授業で、気になって仕方がなかった事。
必死で友人からその子の情報をかき集めた事。
テニスサークルの新歓で、少しおしゃれしたその子がとても可愛かった事。
テニスの練習中の事。
テニス選手の話で盛り上がった事。
合宿で一緒にバーベキューをした事。
語りきれない思い出は次々と口をついて出て、その度に奴は飽きもせず丁寧な相槌を打ってくれた。
話はどんどん今に近付いて来て、告白、そして振られるという所では、二人してもう一度泣いた。
一瞬、今までのどんな友人より、俺の事を、想いを、分かってくれた気がした。
その涙も引いた頃、俺はぽつりと言った。
「なぁ、ラフ・メイカー」
「何?」
「今でもさ、俺を笑わせるつもりはあるか」
ドアの向こうで、勢いよく立ち上がった気配があった。
「当ったり前さ!」
涙に濡れた声でも、当初の底抜けの明るさが戻っていた。
「それだけが生き甲斐なんだ」
――笑わせないと帰れない!
限りない誇りを込めて、太陽のように奴は言い放った。
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