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「そうか」
ふっ、と俺は小さく笑った。
「もう、アンタを部屋に入れてもいいかなぁ、って思ったんだけどさ」
ドアノブの下のつまみを捻り、鍵を外す。
ドアノブに手をかける。回す。そして――引く。
ぎこちなく笑ったままで俺は言う。
「困ったことにさ、開かないんだよ、ドア」
嘘だ。
「泣きすぎちゃって、もうこっち涙が洪水なんだよ。その水圧で、開かないんだよドア。引っ張ってみてんだけど、びくともしなくって」
その言葉通りに、がちゃがちゃと何度がドアを引いてみる。ドアは開かれない。
当たり前だ。
このドアは外開きなのだから。
こんなみっともない俺を見られたくないっていう、チンケなプライドの最後の抵抗だ。それが邪魔をして、どうしても自分から開ける事が出来なかった。
「だからさ、悪いんだけど、そっちから押してくれよ。鍵なら開いてるから」
何を今更。自分でも思う。でも、今更だからこそ格好つけたいのかも知れない。
笑わせさせると笑わせてもらうでは、違うのだ。
だから、さっきみたいに明るく笑って「外開きだよ、コレ」とか言いながら、入ってきて欲しかった。
お願いだ、ラフ・メイカー。そのドアを、どうか。
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