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「あ、ありがと……ございます」
力なく、へなへなとした裏声でそう言えば、先輩もいくらか気まずそうに、
「い、いや、別に何でも……」
と、そっぽを向いた。
ふわぁ~と漂って来る先輩の香り。
女の人特有の、お花みたいな優しい香りがする。
先輩、香水でも使ってるのかな?
なんて、余裕で考える場合なんかじゃないんだけど……
あの、先輩……
ま、まだ抱き締めたままです……
離してほしいわけじゃないけど、
このままじゃ、ボクがヤバイっ!
恥ずかしくって、嬉しくって、
また、訳が分からなくなっちゃう!
「せ、先輩……」
「朝、比奈……」
ボクの声と先輩の声。
どちらも必死に絞りだしたかのような、蚊の鳴く声。
「「!!」」
またもや同時に驚いた顔をすれば、やはりまた、お互いに余所を向く始末。
どうしたら良いか、本当にわからない。
思わぬ状況に2人してあたふたしてるみたい。
でも、ということは、ボクと同じで先輩も嬉しい、のかな……?
だったら、嬉しいな……
「はいはーい、一樹?
・・・・
彼女さんとラブラブの中、
もーのスゴく悪いんだけどー
お邪魔しちゃうわね~」
どこからか聞こえた女の人の声にそんな思考は現実に戻された。
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