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「すまない、約束の時間より
10分も早く着いてしまった。」
そう言って薄く微笑むその人に、不本意ながら見惚れてしまう。
長い睫毛にキリリとした目。
すっと通った鼻に、桜色の薄い唇。
身長はボクなんかよりずっと高く、無駄な贅肉なんてまるでない、キュッと締まった身体のライン。
髪は短髪、ちらりと形の良い耳が覗く。
……ダメだ、格好良過ぎる。
「……朝比奈(アサヒナ)?」
「ぁ……、大丈夫ですッ!
ボクも5分前に来たばっかです!」
よくよく考えてみれば、会話文がおかしいのだけれど、その人は何も気にしない様子で、「そうか」と言って、嬉しそうに口角をあげた。
「……っ!」
無意識であろうその純粋な笑顔に
思わず、胸がトクリと跳ねる。
格好良過ぎて、何がなんだか分からなくなりそうだった。
その人、
速水 一樹(ハヤミイツキ)先輩はボクの憧れの、想い人だったから。
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