願いは違(たが)うように

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「これ、私には必要ないから」 俯く私に差し出されたのは小さなサイズの封筒。 手渡された感じだと軽いだけで、何が入っているのか検討もつかない。 ……というより、開ける気力すらない。 「……下校時間、  とっくにすぎちゃってるから、  一樹は早く帰って休んでね?」 じゃあ、と手を振り弥生も席を立つ。 ポケットを探り、深紅の携帯電話を取り出せば、何やら少しだけ弄って、そのまま保健室を出ていく。 待って、とは言えず、ただその後ろ姿を見送るしかできなかった。 「……はぁ、」 短くため息を吐いて、封筒をベッド脇に置く。 その近くにあったカバンを手にすれば、そのまま立って、帰宅の準備を進めた。 結局、どうなったのかとか何も聞くことができなかった。 でも、仕方がない。 「……帰ろう」 自分に指示するように呟いて、私も保健室を後にした。
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