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一見、俺の方が不利だと思われる作戦。
けれど俺は自分の動態スキルと瞬発スキルを信じこの作戦を立てた。
この敵の前は大きい盾と剣、そして堅い皮膚に覆われているため、前からの攻撃は困難だと俺は考え、がら空きの背中ならと思い、この土地の特性を利用したのだ。
「…はっ」
俺は掛け声と共に、敵の背中に向かって両手に握る剣を真横に切り払う。
水色のライトエフェクトを纏った刃が堅い皮膚を今回は確実にえぐり、血液の代わりに鮮紅色の光芒が飛び散る。
ぐぁぁっ!!!!、という鈍い悲鳴。
しかし俺の剣はそこで止まらない。
起こしたモーションに従って、システムが自動敵に俺の動きをアシストし、通常では有り得ないほどの速さで次の一撃へと繋げる。
これが、この世界における戦闘を決定づける最大の要素、《剣技》―《ソードスキル》だ。
左から右へと跳ね戻った剣が、再度悪魔の背中を切り裂く。
そしてそのまま体を一回転させ、三撃目がいっそう深く、敵の背中に真っ直ぐ傷を刻み込む。
「ぐぁぁっ!!!」
デビルナイトは、俺が攻撃を加える、がら空きの背中のせいか、成す術べ無く怒りあるい恐怖の雄叫びと共に両腕を広げた。
しかし、俺の連続技はまだ終わっていない。
俺は、がら空きになった敵の前に回りこみ、横縦と切り裂いた。
とどめの二連撃―。
最後に放った二連撃によって俺の眼前に十字に描かれた水色の光のラインがぱっと眩く拡散する。
中級二連撃ソードスキル《十字架(クロス)》。
鮮やかなライトエフェクトが、もうすでに黒い砂埃りが晴れたブラックサンドで光り、薄れた。
同時に、デビルナイトの頭上に表示されたHPバーもまた一ドット残らず消え失せた。
長い断末魔を振り撒きながら後ろにのけ反っていく黒い身体が地面に墜ち―。
ガラス塊を割り砕くような大音響ととも、微細なポリゴンと欠片となって爆散した。
これがこの世界における《死》。
瞬時、そして簡潔。
一切の痕跡を残さない完全なる消滅。
視界中央に紫色のフォトンで浮き上がる加算経験値とドロップアイテムリストを一瞥し、俺は剣を手元で回して背中に収めた。
そのまま数本歩き、乗り捨てた黒く反射するスイックアスター(大型スクーターのようなもの)に跨がった。
安息に浸る事が出来たのか詰めていた息を吐き出た。
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