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これで何度目だろうか。
とにかく長々と続く担任の言葉は酷く単調で、聞いているだけで飽き飽きしてくる。
さっさと講義に移してくれればいいのに。と内心で愚痴を溢しつつも、そこは優等生らしく大人しく背筋を伸ばし、拝聴させて頂く。
詰まらないな…
どれ程、時がたっただろうか。
話は終わる気配もなく、いい加減大多数の生徒が辟易してきた、丁度その時だ。
「先生、長々の御高説は大変有難いのですが、先生の仰った様に我々は指導者です。
皆の代表たる者、常にその心構えは出来ております。
然らば、どうぞお気遣いは無用にて、もっと実践的な死神の何たるかを、御教授願えませんか?」
不意に響いた声に担任の教師は勿論、クラス内の生徒たちも一斉にその声の方へと視線を向ける。
鈴の鳴る様な声に導かれて、藍染も視線を自身の隣へと投げた。
クラス中の視線が集まる中、不敵に笑っていたのは一人の少女。
長い紫の髪に、切れ長の瞳、抜ける様に白い肌。
誰もが息を飲む程の、壮絶な美貌に貼り付いた挑戦的な笑みが印象的なその少女は、さる上級貴族の娘だった。
そう言って酷薄な笑みを刻む少女に、藍染は魅入っていた。
対する少女は言いたい事を言って満足したのか、ざわめく周囲を他所に、机上の教本を開き始めた。
その様子から目が放せず眺めていると、不意に少女が此方を向いた。
「…っ」
驚いて目を見開くと彼女は一瞬、怪訝そうに眉を潜めたが、ふっと笑うと首を傾げながらも薄く笑んだ。
「やあ君、名前は?私は紫苑、不二神紫苑(ふじがみ シオン)だ」
「あ…藍染、惣右介」
呆然としながら呟くと、彼女――不二神は更に笑みを深めて
「そうか、君が藍染君か。同じ組になるだろうとは思っていたが、最初に話したのが君だなんて、私は運がいい」
「え?」
「いや、何でもない」
言う意味が分からずに問い掛けると、不二神は意味深に笑み、視線を真新しい教本へと戻した。
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