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「何をしている!早く行け!」
驚いた崎田は不二神を怒鳴り付ける。だが、少女はただ笑みを刻むに留め、こちらへと駆け寄る男に言った。
「隙を見せるな
――来るぞ」
「なっ!?」
少女の楽しげな台詞と時を同じくして、走る崎田の丁度真横に、暗い歪みが出現した。
ジャシャァァッ
爬虫類の威嚇にも似た音が鼓膜に届く。
「くっ!!」
咄嗟に身を捻るが、それよりも早く長い爪が唸った。
「崎田ぁーっ!」
仲間の危機を知らせる声に死を覚悟して目を閉じるが――衝撃はいつまで経っても襲ってきはしなかった。
代わりに響いたのは鋼同士が擦れる様な、甲高い音。
キィイインッ
「…っ!お前…」
恐る恐る目を開け、彼は目を見開く。
そこには己の浅打一本で、虚の爪を支える下級生の姿があった。
「大丈夫ですか?」
顔色一つ変えず、虚の爪を防いだまま藍染は問い掛ける。
茫然とする崎田は、黙って頷く事しかできない。そこへ厳しい声が飛んだ。
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