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その間に距離を稼いだ不二神が詠唱を始める。
「さて…この位離れれば、完全詠唱しても問題ないか」
少女は心を鎮めて、ゆっくりと息をつくと声に意志と力を乗せ言葉を紡ぎ始めた。
『自壊せよ 血肉の仮面・万象・羽搏き ヒトの名を冠す者よ…』
ざわざわと辺りの空気を波立たせながら霊圧が上がり始める。
ひゅんひゅんと空を切る音と共に、視認できる程の霊子の渦が周囲を取り巻いた。
『罪知らぬ幽壁(ゆうへき)・再読し・倒滅し・災禍の凶爪に自らの牙を穿(うが)て!』
詠唱が終わると共に、虚を見据えた瞳が鋭彩な輝きを示す。
掲げられた手に青い焔が集い一気に収束する。そして――
「『練式の十二 四縛蒼焔(しばくそうえん)』!!」
力ある言葉と共に収束した焔が閃光の様に閃き、解き放たれた。
術者の手から離れた炎は激烈な速さで虚の躰を拘束し、燃え上がる。
ギジャアァアアッ
耳障り極まりない虚の苦悶の声。それこそがその術の威力を物語っていた。
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