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「すまない、心配を掛けたか」
「当たり前だろう。何があったんだい?」
首を傾げると彼女は、ふと浅い溜め息を吐き、肩に置かれたままの藍染の手に、こつりと頭を乗せた。
その拍子に、艶やかな髪がさらりと手に触れる。
「…っ」
藍染は僅かに動揺したが、それでも至って平静を装い言葉の続きを待った。
紫苑は俊巡すると、やがて重い口を開いた。
「大した事じゃない…」
「仕事が手につかない程、悩んでいるのに?」
「そんな事はないだろう。1日で片付けなければならない分は、きちんと終らせてる」
「けど、いつもの君らしくない」
頑なに話そうとしない紫苑に、僅かな苛立ちを込めて食い下がる。
「僕はそんなに、信用ならない男なのかな?」
珍しく拗ねた様な言い方になる。
何故彼女が自分に隠すのか、その意味が分からなかった。
学生時代からずっと一緒で、他の誰でもなく、自分こそが彼女の親友であるのだと言う自負があった。
だからこそ、彼女が悩む理由を自分に話すのを躊躇う事が寂しかった。
肩を掴む手に力を込める。
「藍染…」
「話してくれ、紫苑。僕たちは…親友だろう?」
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