39人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
微かに躊躇しながらも、深紫の目を真っ直ぐに見詰め返す。
話して欲しかった――彼女の口から。
「君が心配なんだ」
駄目押しとばかりに口にすると、彼女は迷った様に沈黙を続けた。
その間、藍染は黙って待っている。
その沈黙は堪らなくもどかしく感じた。
――どれ程の沈黙の後だろう。
紫苑は小さな溜め息を吐くと、漸く諦めたかの様に口の端に苦笑いを浮かべた。
「そんな顔をするな」
そっと、頬にしなやかな指が触れた。
少し冷たいその感覚に、藍染は目を細める。
「悪かった。君にそんな顔をさせるつもりは無かったんだが…」
「紫苑」
頬を滑る手をそっと取る。
思いの外、小さなその手は酷く頼り無く思えて、心が波立つ感じがした。
「少々、厄介な事があってな。それで、悩んでいた」
「どんな事?」
先を促すと、彼女は握った手に力を込めた。それに応える様に、藍染も握り返す。
彼女は続けた。
最初のコメントを投稿しよう!