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つまり脱退とは危険分子であると中央に判断された者への表向きの処遇なのだ。
尤も、それが他の隊員に知れる事は無い。
脱退させられた者の末路は憐れそのものだと、紫苑は呟いた。
彼らは強制的且つ半永久的に、特別檻理下に置かれるのだ。
「仲間を救うのが、悪とされたんだ。こんなの、間違っている」
「紫苑…っ!」
慌ててその言葉を遮る。もし、警邏隊にでも聞きつけられれば、彼女自身も特別檻理に送られてしまうかもしれない。
しかし彼女は恐れもせずに続けた。
「下界には無関心なくせして、そう言う所だけしっかり罪に問うて来るんだ。そんなの、可笑しい…違うか?」
ぎゅっと、手を握られた。
「私は承服出来ないし、するつもりもない。正しく判断出来ないのならば、天など無いも同じだ」
握った手が小刻みに震えていた。
「天が不在だと言うのなら、いっそ意志ある誰かが立つべきだ。絶対的で唯一の者が、世界を牽引し、導くべきだと…私は思う」
「紫苑…君は…」
惑いを隠せぬままに口を開くと、珍しく揺れる様な、けれど強い意志を秘めた瞳が見詰め返してきた。
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