39人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「可笑しな奴だな」
恐らく、彼女自身意図してはいないのだろう。
再び書類に目を落とした紫苑は静かに呟いた。
「なぁ、惣右介」
「何だい、紫苑」
「もし――もし、事が露見して君自身の立場が危うくなったら、直ぐに私と手を切るんだぞ」
「…始める前から、失敗の予想かい?」
「常に最悪の事態を考えて行動しろ、と言っているだけだ。
いいから約束しろ。危なくなったら手を切ると――私の企みに付き合って君まで一生を棒に振るなよ」
穏やかだが、否やを言いにくい響きの声に、藍染は肩を竦めた。
「大丈夫。そうならない様、僕が手を打つよ。昔からそう言うのは得意だからね」
「惣右介」
「手段は僕に任せて、君は全てを手にした後の事を考えておいてくれないか」
言いながら自然と口角が上がるのが分かる。
何かを企てるのは楽しい。が、もっと楽しいのは彼女と何かをやり遂げる事だ。
紫苑が天に立つと言うのなら、その道は自分が拓こう。
最初のコメントを投稿しよう!