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後は全員、あの不可思議な虚にやられた。
「出てこいだと?フン…そう言われて、素直に出ていく馬鹿がいるか」
ぼそりと口の中で呟く。
人型のくせに虚閃(セロ)をパカパカ打ってくる出鱈目さに辟易しながらも、何とか事の打開を図ろうと思考を巡らせる。
自分の他にも席官はいたが、彼らもあっさりと殺られてしまった。
鬼道と得意の戦略で何とか堪えたものの、そう何時までも逃げ切れるものでもない。
「かと言って、斬魄刀の解放は…以ての他だしな」
足元で苦し気にうめく隊士をチラリとみやる。
自分一人なら、何とか切り抜ける事も出来る。が、それではこの若い隊士が虚どもの餌になってしまう。
守りながら戦うには絶望的な状況に、やるせない気持ちで溜め息を吐く。
『虫けらの分際で、手間を取らせるな』
対して、変わり種の虚は苛立ち始めたのか、手当たり次第に周囲の建物を破壊し始めた。
せめてもの救いは、ここが全うな地区じゃない事だ。
お陰で逃げ遅れたり、巻き込まれたりした者はいない。
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