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「取り敢えず、ここから離れた方がいいか」
ぐったりと力無く倒れ伏した隊士をちらと眺め、嘆息する。
斬魄刀の柄を握り慎重に腰を浮かせた。
研究用に持ち出していた殺気石を隊士の死覇装の袂に忍ばせると、重心をやや前にして立ち上がり、そっとその場を離れた。
相手の霊圧感知能力が低いのか、はたまた霊圧を遮断する外套を身に付けているお陰かは分からないが、今のところ気が付かれてはいない様だ。
面倒な事、極まりないな
自分は本来、あまり近接戦闘が得意ではない。鬼道を駆使した戦術や規則ある試合なら負けはしないが、実践的な斬術や白打は同期の連中に比べれば若干劣る。
対して刃を交えてみた感じ、相手はどうにも斬拳を得意としている節があった。
おまけにそこそこ速い足もある。
挙げ句、近くには無傷の大虚がまだ一体――全く、厄介極まりない。
「何とか時間を稼ぐしかないか」
少なくとも隊長格が来るまで逃げ回れれば、反撃の目はある。
「二対一か、くそっ…」
背筋を嫌な汗が伝う。
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