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苦い笑みを浮かべながら、紫苑は人型虚の背後に飛び出した。
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藍染が辿り着いた時、そこは惨憺たる有り様だった。
大きく弧削げた岩肌、無理矢理に薙ぎ倒された樹木、抉り返った大地。
その所々には血痕らしきものもあり、彼は思わず目を見張った。
細波たつ心を押さえ付け周囲を探ると、辿り着いた場所からは更に数里離れた場所に、彼女の霊圧を感じた。
大地を駆け破らんばかりに蹴って急ぐ。
「紫苑っ!」
ざっと砂を弾き声を上げると、片膝を着いたままの姿で彼女はゆっくりと首を巡らせた。
「惣、右介…?」
「…っ!」
その姿に、思わず息を呑んだ。
普段、軽快に翻っていた死覇装の袖は、流された血を吸って細い体躯にぺったりと張り付き、いつも小綺麗に纏められていた長い髪も、戦いの中で乱れ、荒い息を吐く肩や頬に落ちていた。
真っ白でしなやかな指先は、余程強く斬魄刀の柄を握ったのか細かく皮膚が裂け、見るからに痛々しい。
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