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「君が必要なんだ!一緒に世界を変えると、約束したじゃないかっ!」
困った様に笑う紫苑に、藍染は必死になって叫んだ。血を吐く思いで、思い付く限りの言葉を。
「裏切るのか、僕を!君が巻き込んだのに!君は、責任を取るべきだっ」
手を伸ばせ、この手を取れと。だが、紫苑は眉根を寄せて笑うだけで、頑として首を縦に振ろうとはしなかった。
絶望で目の前が真っ暗になる。
呑み込まれて行く彼女の姿を目前にしながら、己の力の無さを呪った。
「お願いだ、紫苑!行かないでくれ!一緒にいてくれ!」
ただ、一緒にいたかった。
ただ、守りたかった――どうしようもなく、愛していたから。
自覚した想いが、秘めていたそれが、心の中心を深く抉る。
欲しかったものが、自らの手を零れ落ちていくのを、藍染は顔を歪めて眺める事しか出来なかった。
泣きそうな声で必死に呼び掛ける幼馴染みに紫苑は、今までで一番綺麗な笑顔を向けた。
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