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誰よりも純粋なあの男は、きっとその言葉を真に受けて、実行してしまいそうだったから。
だが、今更どんなに後悔しても、言ってしまった言葉が戻る筈もなく。
「我ながら、何と言う大馬鹿者だ…」
誰よりも純粋で、優しくて、素直な惣右介。
一緒にいて欲しいと懇願した彼の手を、事情があったとはいえ、振り払ってしまったのは自分だ。
今頃は、きっと酷く傷付いている筈だ。
「戻らなくては…」
理由は分からないが、どうやら自分は生きているらしい。
そして、生きてここに来たと言う事は、生きて戻る事も可能な筈だ――理屈上では。
「早まるなよ、惣右介…」
ゆっくりと立ち上がり、ふらつく足取りで砂漠の砂を踏み締める。
その度に傷が痛んだが、立ち止まる訳にはいかなかった。
孤高の天に立とうとしている友の姿を想いながら、彼女は先の見えない旅路を歩み始めた。
end
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