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これ以上、彼女を刺激してはいけない。何かがそう告げていた。
「先輩――」
もうそれ位で、と双方を宥めようとする。が、今度はその行動が気に障ったのか、彼の怒りの矛先が藍染の方へと向き始めた。
「大体、お前もお前だぞ藍染!噂では入試は首席だったそうじゃないか!
それなのに、家柄のせいでこいつに代表の座を奪われて…本来なら真っ先に抗議すべき所だぞ?
それを何故、そいつの言いなりになる?お前には誇りがないのか!否、それとも…お前はそいつの――」
「先輩」
尚も言い募ろうとした上級生の言葉に、静かな声音が被った。
声音の主は――不二神。
彼女は黒紫の双眸を笑みの形に歪めて、ごく静かにそちらを見詰めていた。
「私の事は、如何様にも仰って下さって結構。
ですが、我が友、藍染惣右介への暴言は撤回して頂きたい」
「不二神…」
「藍染は私のたった一人の理解者です。その藍染を貶める事は許しません」
庇われた背から出て、彼女は語る。
自分よりも小さな背を見ながら、藍染は何とも言えない感情が胸にざわめくのを感じた。
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