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衣紅ちゃんは自殺未遂者だった。
何度も実行したけど、止められていく事が出来なかったって、そう言った。
彼女がそういうことをしているというのは薄々気づいていたし、私がこの世の中に絶望していることも衣紅ちゃんは気づいていたから特に驚きはしなかった。
普通に、淡々と。
話は続いた。
分かり合える存在。
通じ合う気持ち。
自分の存在を認めてくれて、否定しないでくれる衣紅ちゃんのことを、心から好きになっていた。
それは……、
まだ愛なんかじゃなくて。
素直な、友達としての好意。
衣紅ちゃんはよく言っていた。
「ここに僕がいると、存在を認めてもらえないことが怖い」
だから私は、衣紅ちゃんという存在を焼きつけた。
私の目には、貴女しか映らなかった。
それでいいと思ったの。
貴女も私を見てさえくれたら、私は寂しい思いをしなくて済む。
もう、呼吸が乱れるほど苦しまなくて済む。
独りは、怖い――。
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